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チュニジア、直前2試合0得点6失点の衝撃——アフリカの堅守は崩壊したのか

W杯開幕直前、日本の第2戦の相手・チュニジアに衝撃的な数字が突きつけられた。直前のテストマッチ2試合で0得点6失点——アフリカ最終予選を22得点・無失点で駆け抜けた「堅守のチュニジア」が、である。監督自身が試合後に「悪夢だった」と語るほどの内容だったが、この数字を額面通りに受け取るのは早計だ。0-6には0-6なりの事情があり、数字の裏には日本にとっての本当のヒントが隠れている。直前2試合の中身を細かく整理し、6月21日の日本戦にどうつながるかを読み解く。

直前テストマッチの結果——数字はあまりに重い

チュニジアがW杯前に組んだテストマッチは、いずれも欧州の強豪とのアウェイでの試合だった。

  • 6月1日 vs オーストリア(ウィーン):0-1 敗北
  • 6月6日 vs ベルギー(ブリュッセル):0-5 敗北

オーストリア戦——「いつものチュニジア」だった90分

ウィーンでのオーストリア戦は、スコアこそ敗戦だが内容は接戦だった。チュニジアは持ち味である低めの守備ブロックを敷き、オーストリアの攻撃を中央で受け止め続けた。決壊したのは一度だけ——ザビッツァーの一撃に沈んだものの、崩され続けた試合ではない。「格上相手にアウェイで0-1」という結果は、W杯前の調整試合として悲観する内容ではなかった。問題は次の試合だった。

ベルギー戦——退場が壊した「悪夢」の72分以降

ブリュッセルでのベルギー戦は、前半28分にトロサールのゴールで先制を許し、53分にデ・ケテラーレに追加点を奪われた。この時点で0-2。重い展開ではあったが、試合はまだ壊れていなかった。転機は62分だった。イスマエル・ガルビが2枚目のイエローカードで退場する。10人になったチュニジアは、65分にデ・ブライネ、85分にルケバキオ、87分にラスキンと立て続けに失点し、終わってみれば0-5。W杯の壮行試合としてはこれ以上ない苦い結果となった。

直前2試合の合計6失点のうち、3失点は「数的不利の30分間」に集中して生まれたものだ。この注釈なしに「チュニジア守備崩壊」と読むのは正確ではない。一方で、11人の時間帯でも先制を許す展開が2試合続いたことは事実であり、「先に失点する癖」は気になる材料として残る。

布陣とスタメン——基本は4-2-3-1で固定

2試合とも、チュニジアは4-2-3-1を採用した。

  • GK:直前2試合で起用が分かれており、日本戦の正守護神は流動的とみられる
  • 右SB:ヤン・ヴァレリー
  • CB:モンタッサル・タルビ、オマル・レキク
  • 左SB:アリ・アブディ
  • ダブルボランチ:エリアス・スキリ、ラニ・ケディラ
  • 右MF:アニス・ベン・スリマン
  • トップ下:ハンニバル・メイブリ
  • 左MF:イスマエル・ガルビ
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注目すべきは、このスタメンが「テスト編成」ではないという点だ。予選を支えた最終ラインの中心タルビ、中盤の底のスキリとケディラという背骨はそのまま維持されている。つまりベストに近い編成で6失点したことになる。数字以上に気になるのはここである。

構造としては、4-2-3-1から守備時は4-4-2に近い2ラインのブロックへ移行し、奪ったらメイブリとガルビの推進力で速く運ぶ設計だ。ブロックの強度自体は予選で実証済みだが、欧州トップクラスのテンポでブロックを敷く「前」に殴られると脆い——という弱点が直前2試合で露呈した。

注目選手の出来栄え——主役たちが沈黙した

ハンニバル・メイブリはチームの創造性を担う攻撃の核だが、ベルギー戦では存在感を発揮できなかった。チュニジアの攻撃は「奪ってメイブリへ」が生命線であり、彼が消えると一気に手詰まりになる——その構造的な課題が露呈した形だ。逆に言えば、調子が上向けば一人で試合を変えられる選手でもある。

イスマエル・ガルビはベルギー戦62分に痛恨の退場。試合を壊した当事者として現地でも厳しく報じられた。縦への推進力は攻撃の武器だけに、日本戦に向けては規律面の再整備が急務となる。

モンタッサル・タルビは予選無失点の立役者である守備の要で、空中戦とカバーリングに強みを持つ。ただし直前2試合では彼を含む最終ライン全体が後手に回る場面が目立った。

エリアス・スキリ(フランクフルト)は堂安律のチームメイトでもある守備的MFだ。中盤のスペースを消す仕事は健在だったが、攻撃への接続では見せ場を作れなかった。日本のインサイドハーフ周辺とのマッチアップは、この試合の隠れた焦点になる。ラニ・ケディラ(ウニオン・ベルリン)はラモウシ監督が信頼を置くボランチで、スキリとの並びで中央の門を閉じるのが彼らの生命線だ。

監督コメントと現地の評価——「正直、恥ずかしい」

ベルギー戦後のラモウシ監督のコメントが、チームの空気を物語っている。「夢を見せに来たのに、今日は誰にも夢を与えられなかった。悪夢だった……正直、恥ずかしい」。アフリカのメディアも「W杯直前に最悪の出来」「2試合で0-6という数字がすべてを物語る」と容赦ない論調だった。一方で、「10人でベルギー相手に戦えば5失点は起こりうる」「分岐点はガルビの退場で、11人の時間帯は致命的ではなかった」という冷静な見方も一部に存在する。

ピッチ外にも不安材料がある。ベテランMFフェルジャーニ・サッシが、負傷ではなく招集拒否でW杯メンバーから外れるという騒動が起きた。ラモウシ監督は「愛国心・プロ意識への裏切り」とまで発言しており、経験あるベテランの不在に加えて、チームの結束という面でも波風が立った状態で本大会を迎える形となった。大会直前のチームに必要な自信と一体感——その両方に傷がついた状態が、今のチュニジアの偽らざる現在地だ。

それでも警戒すべき理由——予選の数字は本物

散々な材料が並ぶ一方で、思い起こすべきは予選でのチュニジアだ。アフリカ最終予選10試合で9勝1分け、22得点・無失点——この「無失点」は誇張でも何でもない。2ラインのブロックを敷き、中央を完全に封鎖し、相手を外回りにさせてクロスを跳ね返す組織された守備と鋭いカウンターが機能すれば、簡単には崩れないチームだ。

直前2試合は、いずれも格上の欧州勢に対してアウェイで戦った試合だった。ボールを持たされる時間が長く、ブロックを敷く前の切り替えの局面で殴られる——チュニジアが最も苦手とするシチュエーションが90分続いたわけである。日本戦では立場が変わる。ボールを持つのはおそらく日本であり、チュニジアは自陣に引いて「守ってカウンター」に回帰してくる可能性が高い。つまり日本が対峙するのは、0-5のチュニジアではなく、予選無失点のチュニジアだと想定しておくべきだ。

日本との過去対戦——相性は良い、ただし「あの0-3」がある

日本とチュニジアの通算成績は5勝1敗。数字上の相性は良好だ。2002年日韓W杯のグループリーグでも対戦しており、日本が2-0で勝って決勝トーナメント進出を決めた、日本サッカー史に残る相手でもある。

ただし唯一の黒星が強烈だ。2022年6月のキリンカップ決勝、日本は0-3で完敗している。ブロックを敷いたチュニジアを崩せないまま、PKとカウンターで沈んだ試合だ。「引いたチュニジアを攻めあぐねて、逆に仕留められる」——日本にとって最悪のシナリオを、彼らは一度実演している。翌2023年10月の対戦では日本が2-0で雪辱しており、直近の力関係では日本優位と見てよいが、あの0-3の記憶は「チュニジアに楽な試合はない」という警告として残しておくべき事実だ。

W杯本大会での「潜伏力」——2022年の戦いぶりを思い出す

チュニジアというチームの本質は、W杯本大会での戦いぶりに最もよく表れている。2022年カタール大会のチュニジアは、初戦でデンマークと0-0のドロー。続くオーストラリア戦は0-1で落としたものの、最終戦でディフェンディングチャンピオンのフランスから1-0の歴史的勝利を挙げた。グループ突破こそ逃したが、3試合でわずか1失点。優勝経験国を相手に無得点に抑え込む守備組織は、本大会という舞台でこそ真価を発揮する。

「テストマッチのチュニジア」と「本大会のチュニジア」は別物——この前提は、過去の大会が証明済みだ。直前の0-6を額面通りに受け取って軽く見ると、6月21日に足をすくわれるのは日本の方になりかねない。

日本戦(6月21日)への示唆——焦れた方が負ける

直前2試合と過去の対戦から、日本目線で読み取れるポイントを整理する。

  • チュニジアの攻撃は手数が少なく、メイブリ頼みの構造だ。彼への供給路を断てば得点の匂いは大きく減る
  • 守備は「ブロックを敷く時間」を与えなければ機能しない。立ち上がりから縦に速く刺し、整う前に仕留めるのが最も有効な手段となる
  • 規律面が不安定な側面がある。プレッシャーをかけ続ければ、ガルビの退場のような自滅も引き出せる
  • 先制点の価値が極端に大きい。追う展開のチュニジアは前に出ざるを得ず、ブロックの強みを自ら手放すことになる

一方で、日本がボールを持たされて攻めあぐねる展開になれば、それは2022年キリンカップの再現——つまりチュニジアの土俵だ。予選で22得点を奪った速攻は、日本のSB裏を確実に狙ってくる。「焦れずに、しかし早めに仕留める」。矛盾するようだが、これがこの試合の核心である。理想は前半のうちの先制点。それさえ奪えれば、引いて守る理由を失ったチュニジアを大きく崩せるはずだ。

展開別シナリオ——3つの「もしも」

日本が先制した場合:チュニジアはブロックを解いて前に出ざるを得なくなる。スペースが生まれ、日本の2点目・3点目の確率は一気に上がる。直前2試合で見せた「追う展開の脆さ」を考えれば、先制後の日本は試合を支配できる可能性が高い。

チュニジアが先制した場合:最悪のシナリオだ。彼らは喜んでブロックを固め、予選無失点の戦い方に完全移行する。2022年キリンカップの0-3は、まさにこの展開から生まれた。失点直後の10分間で焦らず、サイドを変えながら根気よく穴を探す胆力が必要となる。

0-0のまま膠着した場合:時間が進むほどチュニジアに有利だ。引き分けでも御の字の彼らと、勝点3が欲しい日本。終盤に日本が前がかりになったところへのカウンター一発が、彼らの描く理想の絵である。

当日の観戦ポイント3つ

  • キックオフ直後の日本の入り方。最初の15分で縦に速く刺しに行っているかどうかで、この試合の日本のゲームプランが読める
  • メイブリの位置。彼が低い位置までボールを受けに下がり始めたらチュニジアの攻撃が機能していない証拠。高い位置で前を向く回数が増えたら要警戒だ
  • 60分以降のスコア。0-0のまま終盤に入った場合が最も危険な時間帯。ここで日本のベンチワークが試される

まとめ——0-6は「弱さ」ではなく「苦手の証明」

直前2試合の0得点6失点は、チュニジアが弱いことの証明ではない。「ボールを持たされて、ブロックを敷く前に殴られる試合」が苦手であることの証明だ。そして日本戦は、その苦手な展開にはおそらくならない。彼らは引いて、待って、一撃を狙ってくる。日本に求められるのは、2023年に2-0で勝った再現性と、2022年に0-3で負けた記憶の両方を持って臨む姿勢だ。第2戦のキックオフは日本時間6月21日。グループ突破の行方を最も大きく左右する90分が、そこに待っている。

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