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海外サッカーファンが本当に欲しいもの5つ——football-jpを作って気づいた「ズレ」の正体

「ファンが欲しいもの」と「サービスが提供しているもの」の間に、一貫したズレがある。football-jpを作り・使い続けることで見えてきた5つのニーズは、どれも地味だ。しかし地味であるほど、そこに応えているサービスがないという事実が浮かぶ。5つのズレの正体と、なぜそれが今も埋まっていないのかを読み解く。

海外サッカーファンが本当に欲しいもの5つ

「何が欲しいか」より「何が足りないか」から始まった

football-jpを設計するとき、最初に考えたのは「何を入れるか」ではなかった。「何が足りていないか」だった。

海外サッカーファン向けのサービスは、すでにいくつか存在する。公式リーグサイト、クラブの公式アプリ、スコア速報サービス、各種配信プラットフォームのWebサイト——使おうとすれば使える情報はある。にもかかわらず、日常的な観戦のたびに「これが面倒だ」「ここが不便だ」という感覚が繰り返し発生する。

その「繰り返し発生する不便」を書き出したのが、この5つだ。market researchの結果ではなく、自分がファンとして経験を積み重ねた中で感じた体感の記録である。「ユーザーが不便に感じているかもしれない」ではなく、「自分が不便だった」という確実な動機から出発している。

5つを読んでいただくと、どれも「そんなことか」と思うかもしれない。しかしその地味さが重要だ。地味であるほど、そのニーズが長年放置されている可能性が高い。

1. 日本時間でキックオフが「すぐ」わかること

これが5つの中で最も単純かつ最も根強いニーズだ。

海外リーグの試合日時は、多くのサイトで現地時間かUTC(世界標準時)で表示されている。「Kick-off: 20:00 BST」と書いてあっても、BSTがイギリス夏時間だと知らなければ計算できない。UTCなら+9時間で日本時間になるが、夏時間・冬時間の切り替わりで毎シーズン混乱が生じる。

「今夜の試合は何時から」を5秒以内に答えたい。それだけだ。日本時間でキックオフが書かれているだけで、それが実現する。

問題の本質は、時差計算の手間そのものではない。その手間が「試合当日の朝」に集中する点にある。今日試合があるのはわかっている、でも何時かが記憶から曖昧になっている——そのとき、検索して計算して確認するという摩擦が発生する。この摩擦が毎週複数回積み重なると、観戦の体験全体が少しずつ重くなる。

既存のサービスがこの問題を解決していない理由は想像できる。海外リーグのサービスは基本的にグローバルユーザーを想定しており、特定の国の時間帯にローカライズする設計になっていない。「日本人向けに日本時間で表示する」という選択は、グローバルサービスの設計原則と摩擦を起こしやすい。つまり日本のファンにとって最も自然な表示方法が、グローバルサービスには採用されにくい構造的な理由がある。

football-jpはその摩擦を、日本語・日本時間という明確な絞り込みで解消する。「football-jpを開けば日本時間で書いてある」という状態は、使い始めてから習慣になるまで価値が実感されにくいが、一度習慣になると手放せなくなる。

2. 「どこで観られるか」が試合ごとにわかること

次によく問われるのが「この試合、どこで観られる?」という疑問だ。

DAZNか、U-NEXTか、WOWOWか、ABEMAか、それともBS10か。試合ごとに放映権が異なり、シーズンによっても変わる。公式サービスのWebサイトを見ても「このリーグはDAZNで」という案内はあるが、「この特定の試合は?」という確認まではできないことが多い。

この悩みが複数サービスを契約しているファンほど大きくなるという逆説がある。DAZNとU-NEXTの両方に入っているのに、今夜の試合がどちらで観られるかわからない——という状況が生まれる。契約しているのにどこで観るかわからない、という本末転倒な状態だ。

なぜ既存のサービスはこの問題を解決しないのか。配信サービス各社にとって、他社の放映権情報を一元化して見せることは、ビジネス上の動機が働きにくい。自社サービスへの加入を促す立場から見れば、「他社でも観られる」という情報を積極的に提供するインセンティブはない。つまりこの問題は、各プラットフォームの「利害の分断」が生み出している。

利害の分断がある場所には、中立的な第三者のレイヤーが必要になる。football-jpはその立場から「試合×配信局」の対応を一目で確認できる形にしている。これが「あって当たり前」になるまで意外と時間がかかった理由のひとつが、「誰がやるべきか」の所在が曖昧だったことにある。

3. 好きな選手だけを横断的に追える場所

三笘薫のファン、久保建英のファン、上田綺世のファン——それぞれの応援する選手は違う。しかし多くのサービスは「リーグ別」か「クラブ別」の整理を採用している。

「自分が応援する日本人選手を横断的に確認したい」というニーズは、その整理の軸とずれている。所属リーグが違っても、試合がある週末に自分の推し選手の予定をまとめて見たい——この需要への応え方が、既存のサービスには乏しい。

設計の難しさは、68名全員を均等に扱いながら、特定の選手に興味を持つユーザーが使いやすくするバランスにある。三笘薫だけを見たいユーザーと、全68名を一覧で確認したいユーザーが、同じページにいる。この二つの需要を同時に満たすことは、「リーグ別」「クラブ別」の整理では難しい。

football-jpが採用したのは「選手ごとの個別ページ」と「全体一覧ページ」の並列だ。特定の選手だけ追いたい人は個別ページで完結し、全員を確認したい人は一覧から入る。ユーザーが自分の「追いたい範囲」を自分で決められる設計にした。

この設計が持つもう一つの意味がある。海外サッカーファンの多くは「特定の選手が入口になる」という経路をたどる。最初は三笘薫が好きで観始めた、気づいたら日本人全員の動向が気になるようになっていた——この「広がり方」を設計でサポートすることが、サイトの役割のひとつになっている。特定選手への関心が入口になり、そこから海外組全体への関心へ移行するという動線を、「個別ページ→一覧ページ」という構造が自然に支えている。

4. 古い情報に騙されない「鮮度の担保」

これは欲求というより「恐怖の裏返し」として存在するニーズだ。

古い情報を信じて試合時間を間違えた経験——「18時キックオフ」と書いてあったから合わせたら、実はもう試合が終わっていた——そういう体験が積み重なると、どのサイトも信用できなくなる。情報の鮮度は、ファンにとって意外と重大な問題だ。

なぜ情報の鮮度が担保されにくいのか。維持コストの問題がある。情報を正確に保ち続けることは、一度作れば終わりではなく、継続的な更新作業を必要とする。商業的なサービスは収益化の見込みが薄いコンテンツの更新を徐々に削減する。更新が止まったサービスが残り続ける状態は、ユーザーにとって「古い情報の罠」として機能する。

この問題への唯一の回答は、「更新を続けること」しかない。日付と最終更新時刻が明示されていること——それだけで信頼感が変わる。「この情報はいつ確認されたものか」がわかることが、ファンへの最低限の誠実さだ。

football-jpが自動更新と手動確認を組み合わせてデータ鮮度を保つことを最重要事項にしている背景には、「更新が止まったサービスへの不信感」という体験が根にある。信頼されるためには、更新し続けるしかない。地味だが、それ以外の方法はない。

5. 難しくない、シンプルな設計

最後は、シンプルさだ。

海外サッカーには膨大な情報がある。リーグ、クラブ、選手、スタッツ、移籍情報、試合結果——全部を詰め込むと、「で、今夜の試合は何時から?」という最も重要な問いへの答えがどこにあるかわからなくなる。

「機能が多ければいいわけではない」という原則は、サービス設計の議論でよく語られる。しかし実際に「追加しない」という意思決定を繰り返すことは難しい。選手の詳細スタッツ、クラブの最新ニュース、移籍の噂——全部を入れることは技術的には難しくない。しかし全部入れると、「今夜の試合が何時か」が埋もれる。

シンプルさが難しいのは、「余計なものを削ること」が「価値を失うこと」に見えてしまうからだ。追加するたびに何かが増えた感覚がある。削るたびに何かを失った感覚がある。しかしユーザーの体験としては、情報量の増加は「便利さの増加」ではなく「負荷の増加」として受け取られる。

シンプルな設計の中に込められているのは、「あなたはこれだけ知れば十分」という判断だ。その判断がユーザーへの敬意として機能する。「なんでも入っている」ことは信頼ではなく、「自分に必要なものが見つかる」ことが信頼につながる。この5番目が、football-jpを作るときに最も意識したことだった。

5つ全部が揃っているサービスがなかった理由

5つをリストにすると、「どれかひとつは満たしているサービス」はある、ということがわかる。

日本時間を表示しているサービスもある。配信局をまとめているサービスもある。選手一覧があるサービスもある。それぞれが一部のニーズには応えている。しかし5つ全部を同時に満たしているサービスは、探した範囲では見つからなかった。

なぜ全部揃っていないのか。この問いには構造的な背景がある。

まず、各サービスは特定の目的のために作られており、日本のファンの「日常的な観戦体験の全体」を一本の流れとして設計していない。公式リーグサイトはリーグの情報提供が目的で、配信局への誘導はスコープ外だ。配信サービスは加入促進が目的で、他社の情報を並べることには動機が働かない。結果として、ニーズの全体を視野に入れているプレイヤーがいない状態が続く。

次に、この5つのニーズは単体では「市場規模が小さい」と判断されやすい。日本人向けに特化した海外サッカーの試合情報サービスは、グローバル市場では成立しにくく、日本市場では小さすぎると見られる。商業的なサービスが参入しにくい隙間に、ニーズが落ちている。

football-jpを作ることになった出発点は、「どこかにあるはずだ」という前提で探し続けた末に「なかった」という確信が得られてからだった。その確信が、「全部自分で作ればいい」という結論へつながった。

メディアでもクラブでもない、第三のレイヤーとして

football-jpの立ち位置を説明するとき、「海外サッカーメディア」でも「クラブの公式サイト」でもない、という否定形から始めることが多い。

メディアは速報性とコンテンツ量で競争する。公式クラブサイトは特定クラブのファン向けに設計されている。どちらも、「日本人ファンが日常的な観戦のために使う」という用途に特化してはいない。

football-jpが担おうとしているのは、観戦前の「情報確認のハブ」としての役割だ。今夜の試合を観る前に開いて、何時か・どこで観られるか・誰が出るかをまとめて確認できる場所。試合後に結果を確認し、気になった選手のページに飛べる場所。

この「ハブ」は、速報性でメディアに勝つ必要はない。コンテンツの豊富さで公式サイトに勝つ必要もない。ただ「日本のファンが観戦のたびに使いたくなる」という機能に特化することで存在意義が生まれる。

個人サイトがメディアやクラブに対して持てる優位性のひとつは、「特定ユーザーの特定ニーズに絞り込む」という設計の自由度だ。広告収益を最大化する必要がないため、ページビューを増やすためだけのコンテンツを入れる動機がない。商業的な利害と摩擦を起こすことなく、「日本のファンが使いやすいもの」だけに集中できる。それが、「メディアでもクラブでもない第三のレイヤー」の実質的な意味だ。

「6つ目」を作り続けることの意味

5つを書いていて気づくことがある。football-jpを使い続けるほど「次に欲しいもの」が見えてくる、ということだ。

5つが揃ったから完成、ではない。使い続けることで「まだここが不便だ」「これがあれば更に便利だ」という感覚が出てくる。その感覚が、次の改善の動機になる。

5つのニーズは、もともと「ファンとしての自分を観察した結果」として出てきたものだ。market researchではなく、深夜に試合を確認する体験、時差を計算した経験、信頼していたサイトが更新を止めた記憶——これが全部、この5つの源になっている。「作り手」と「使い手」が同一人物であることの最大の利点は、「本当に不便かどうか」が体感でわかることだ。

6つ目の候補は少しずつ見えている。使い続けるほど解像度が上がる。全部を一度に実装することはできないが、「次に何を作るか」のリストが増えていることは、football-jpがまだ成長の途中にあることを示している。

この5つに共感できる人には、football-jpが役に立つはずだ。そして役立った先に、6つ目のニーズが生まれてくる——それが、「本当に欲しいもの」を追い続けることの循環だと思っている。

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